『推し、燃ゆ』宇佐見りん

芥川賞受賞作ですね。おめでとうございます!
しばらく前から、本屋さんの店員がものすごくこの本を推してたので気になっていました。
タイトルからも装丁からも、そこはかとないセンスを感じます。
さて、この本を読んで最初の感想といえば「あぁ、芥川賞だ」でした。(もちろん良い意味で)
直木賞は大衆小説なので読みやすい、芥川賞は純文学なのでとっつきづらいという印象でしたが、
本作『推し、燃ゆ』は純文学でありながらも、読みづらいマイナスイメージを払拭してくれました。
今や「推し活」という言葉が一般的になるぐらい、応援したい推しがいるのが当たり前なんですねー。
私は、幸か不幸か推しの存在はないのですが、よく札幌ドームでジャニーズのコンサートが開催される時の
あの熱狂ぶりは、見ているこちらまで元気をもらっていました。
さて、本作の主人公あかりは、「推し」を全身全霊を傾けて推すことで自分を保っていました。
SNSの中ではしっかりもののキャラを演じていますが、あかりの私生活はボロボロ。
きちんと学校へ通って勉強するという当たり前のこともできず、かといって就職することもできない。
部屋は荒れ放題で、家族とのコミュニケーションすらままならず、コミュ障の域を超えています。
でもあかりは決してだらしないわけではなく、一生懸命やっているのにすべてが上手くいかない。
読者も決して感情移入はできないのですが、彼女なりの思考になんとも歯がゆさを感じるのです。
そんなあかりと外の世界を繋ぐ唯一の存在が「推し」。
アイドルの真幸くんが配信する動画配信を観て、一緒にご飯を食べ、同じ時間を共有する。
「推しのいない人生は余生」と言い切るぐらい、推しに依存した生活を送っています。
そんな中、真幸くんがファンを殴ったことでたちまちSNSが炎上。(これが燃ゆということか)
推しはいつまでも推しではいられない。いつかは必ずただの人になるということ。
内省的でありながらも、常に破滅を望んでいるかのようなあかりの独白が、読んでて本当にキツイ。
このまま読み進めていったら暗い闇に飲み込まれそう、と思いつつも一気に読み切りました…!
彼女は今後どうなるのだろうか…… もやっとした気持ちを抱えたまま本を閉じました。
それにしても宇佐見りんさん、大学生作家ですか。
二十歳そこそこでこの達観した視点は、末恐ろしいと思いましたΣ(・口・)今後が楽しみですね!
個人的評価:★★★★
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