『滅びの前のシャングリラ』凪良ゆう

凪良ゆうさんの作品を読むのは、去年本屋大賞を受賞した『流浪の月』に続き2作目です。
この作家さんって、もともとBL作家さんなんですってねー
去年「BL作家が本屋大賞!」とかなり話題になって、興味を持った記憶があります。
BLのほうは未読ですが少なくとも一般文芸としての凪良作品は、個人的にはものすごく好みです。
さて、2021年も本屋大賞にノミネートされている本作『滅びの前のシャングリラ』。
一言で言うと、「本を読んでいる」という行為も忘れるくらい寝食を忘れて読み耽りました…!
小惑星が衝突し、1ヶ月後に人類が滅亡することがわかったとしたら。
自分ならどうするだろうか。絶望する?泣き喚く?それとも精一杯最後の日まで生きる?
理性のたがが外れた人間は、瞬く間に墜ちるところまで墜ちる。
今はどんな小さなことでもすぐにSNSで拡散されます。略奪、殺人が横行し狂った世界になるのはあっという間。
何でもないような日常が、あっという間に崩れ去っていく恐怖が本作で描かれています。
読んでいて、「理性」というものはなんと脆いものかと。
人間の持つ本能や欲求という感情は、法で縛られていないとたちまち暴走してしまうのですね。
無法地帯とはまさにこのこと。
でも、そんな絶望の中にあっても最後まで必死にあがく人たちもいます。
どうしても好きな子を守りたい冴えない高校生・友樹と、元ヤンの母親・静香。
暴力という性癖から逃れられないヤクザ・信士。そして底辺から上り詰めた歌姫・Loco。
ある意味、平和な世界ではアウトサイダーだった4人。
滅びゆく世界の中で彼らがひとつ、またひとつと小さな幸せを見つけていく様にただただ泣けました。
いろんな意味で衝撃的な物語で、読了後にはしばらく呆然としてしまいました。。。
個人的評価:★★★★+
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