『祝祭と予感』恩田陸

直木賞&本屋大賞W受賞の『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ短編集です!
前作でいたく感動したとはいえ、読んだのはもう何年も前…
再読しないでスピンオフ読んでいいんかな?と思いましたが、読み始めたらたちまちあの感動が蘇りました。
めちゃめちゃ面白いです。
前作で描かれなかったエピソードだったりとか、彼らの後日譚が読めたのが本当に嬉しい。
やっぱり恩田さんの文章を読んでいると、不思議と脳内にピアノの音色が鳴り響くんです。
言葉を紡ぐだけで、繊細なメロディが流れるなんて素晴らしい表現力だと思います。
本作には、さまざまなキャラを主人公に据えた6つの短編が収録されています。
「祝祭と掃苔」
亜夜・マサル・塵が綿貫先生のお墓参りをするエピソード。
前作ではよき友人でありよきライバルだった3人が、和気藹々と会話をしている様子が楽しい。
そして亜夜もマサルも、毎回塵のことを「風間塵」とフルネームで呼ぶのにも笑いました。
「獅子と芍薬」
ピアノコンクールの審査員、ナサニエルと三枝子にまでスポットを当てるとは嬉しい驚きでした。
彼らの10代の頃のエピソードは新鮮で、2人ともこの頃からホフマンに傾倒していたのかと。笑
数十年経ち、生活も環境も変わる。けれど、2人の音楽に対する情熱は冷めることはないのですね。
「袈裟と鞦韆」
「鞦韆」=ぶらんこと呼ぶんですね!本作の中で一番好きで、最後にはほろりと涙が出ました。
前作で宮沢賢治の「春と修羅」を演奏するシーンがありましたが、この曲の誕生エピソードです。
作曲家の重荷は計り知れない。でも読み終わった後に脳裏に浮かんだのは緑溢れるホップ畑でした。
「竪琴と葦笛」
本作のイケメン枠・マサルのジュリアード音楽院プレ・カレッジ時代のお話。
品行方正なイメージがあったマサルだけど、実はこんなにやんちゃなところがあったとは…!
ナサニエルのスモークサーモンのケイパー嫌いも可愛く、なんだこの2人の可愛さwってなりました。
「鈴蘭と階段」
前作ではサポート役だった奏が運命のヴィオラに出会うエピソードです。
楽器というのはどれも同じ音色なんてことは絶対になく、結局は相性なんだと思います。
音を聴いただけで「あ、あの人の演奏だ」と分かるのは、音楽家として最高の褒め言葉ですよね。
「伝説と予感」
最後を締め括ってくれたのは、伝説のピアニストであるホフマンと塵との初めての出会い。
前作ではすでに他界していたものの、ホフマンのその圧倒的な存在感は隅々まで行き渡っていました。
この2人の出会いが、『蜜蜂と遠雷』に繋がっていると思うと感慨深い気持ちになります。
個人的評価:★★★★★
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