『太陽の黄金の林檎』レイ・ブラッドベリ

久しぶりのブラッドベリは、やはり極上でした。
以前読んだ『10月はたそがれの国』ほどの衝撃はなかったけれど、
1編1編がどれも、その情景が絵画のようにイメージできるほどの圧倒的な筆力!
萩尾望都さんがブラッドベリ作品を漫画化する理由がよく分かるような気がします。
本作には22編の短編が収められているのですが、どれもノスタルジーな気持ちになる作品ばかり。
中には「これどういうオチなの?」というような作品もあるにはあるのですが、
物語の雰囲気や世界観にどっぷりと浸ることもまた、読書の楽しみと言えますね。
個人的に特に印象に残っているのはこちら↓↓
ある寒い夜、暗い海の底からやってくる何者かを描いた「霧笛」。
灯台守の二人が目にしたものとは…。ラヴクラフトを彷彿とさせるような描写が見事です。
これも萩尾望都さんが漫画化されているようですね。読んでみたい!
二つの町が競い合うように城壁の形を変えていく「金の凧、銀の風」。
まるで童話を読んでいるかのようで面白い。結局いつの時代も苦労するのは民衆たちですね。
とんでもない展開になりそうな話ですが、ラストは爽やかな幕引きでホッとしました。
これが最も本作の中でSFっぽいお話なのが「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」。
タイムトラベルによって、狩猟ツアーという名目で本物の恐竜を狩ることができる時代。
でも過去の小さな変化によりタイム・パラドックスが……結末は恐怖…
表題作の「太陽の黄金の林檎」は格別の味わいでした。
冷え切った地球を温めるために、太陽から火を持って帰るなんて発想が素晴らしすぎる!
ブラッドベリの底無しの想像力に脱帽です。
上記以外にも不思議な体験を描いた夫婦の話「発電所」や、
少年の外見のまま年を取らなくなってしまった男の話「歓迎と別離」など、珠玉の短編揃い!
解説が故・中島梓(栗本薫)さんだったのが嬉しい驚きで、ほろりと涙が出ました。
個人的評価:★★★★
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