『お探し物は図書室まで』青山美智子

お探し物は、本ですか?仕事ですか?人生ですか?悩める人々が立ち寄った小さな図書室。不愛想だけど聞き上手な司書さんが思いもよらない選書と可愛い付録で人生を後押しします。『木曜日にはココアを』の著者が贈る、明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。(「BOOK」データベースより)
ちょっぴりお久しぶりの更新です。
年度末やら新規採用活動やらでてんてこまいで、落ち着いて本を読む時間が取れていません。
スキマ時間にちびちびと。とにかく体調を崩さないように気をつけなくては……!
というわけで、以前読んだ今年の本屋大賞ノミネートの一冊『お探し物は図書室まで』。
青山さん、お名前だけは知っていたのですが未読の作家さんでした。
だって、「ハートウォーミング」って個人的にまったく食指が動かなかったんだもの!!ww
でもこれを読んでうるっとくるぐらいには、私も成長したということでしょうか( ̄w ̄)
とある町のコミュニティハウスの図書室には、仕事上の悩みを抱えたあらゆる人たちがやってきます。
婦人服売り場で働く若い女性だったり、キャリアと育児で悩む元雑誌編集者だったり。
ベイマックスのような存在感のある見た目の司書・小町さんは、本人の希望の本と一緒に、
現状を打破するきっかけになる本を一冊渡してくれるのですが、
全く関係のなさそうに思える本から、「自分を変えよう」と第一歩を踏み出す勇気をもらえるんです。
悩みを聞いただけで、ピンポイントでその人に合った本を紹介できる小町さんは本当にすごい!
こんな司書さんがいたら素敵だし、毎週のように通っちゃうなぁと思いました。笑
こんなご時世ですから、仕事に悩んでいる人はたくさんいるのではないでしょうか。
転職をしたいがその気力すらない、ニートから抜け出せない、人生の目的を見失ってしまった…
そんなすべての人たちの心に響く、素敵なお話でした。
「図書館」じゃなくて「図書室」っていうのがまたいいですよね。
個人的評価:★★★★
『この本を盗む者は』深緑野分

書物の蒐集家を曾祖父に持つ高校生の深冬。父は巨大な書庫「御倉館」の管理人を務めるが、深冬は本が好きではない。ある日、御倉館から蔵書が盗まれ、深雪は残されたメッセージを目にする。“この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる”本の呪いが発動し、街は物語の世界に姿を変えていく。泥棒を捕まえない限り元に戻らないと知った深冬は、様々な本の世界を冒険していく。やがて彼女自身にも変化が訪れて―。(「BOOK」データベースより)
2021年本屋大賞ノミネート作。
深緑野分さん、はじめましての作家さんです。「ふかみどり のわき」と読むんですね。
色々とプロフィールを調べていると、1983年生まれ!
私のひとつ年上ということで勝手に親近感がわいてきているななこです。笑
本好きの食指が動きそうなタイトルに加え、素敵な装丁!
これはさぞや面白いのだろうと思ったのですが、正直なところのめり込むことができませんでした…
今年の本屋大賞ノミネート作の中では、おそらく唯一のファンタジー作品だし、
個人的にファンタジーは大好きなジャンルのはずなのですが。どうしてだろう。
毎晩少しずつ読み進めていたんですが、いかんせんなかなか読書が進まない(´Д`|||)
主人公・深冬の父が管理人を務める「御倉館」。
その巨大書庫から本が盗まれると、ブックカースと呼ばれる本の呪いが発動し、
深冬が物語の世界に入り込んでしまい、犯人を捕まえない限り元の世界に戻ることはできないのです。
地下洞窟にいる銀の獣を描いた第3章や、すべての人が忽然と消えた街に入り込む第4章はとても映像的で
世界観自体は好みだったのですが、おそらく深冬の性格はあまり好きではないんだろうなぁ(笑)
自分勝手で、いきがってて、でも人恋しくなると泣いてしまうような女の子。
等身大の姿なんだろうとは思うんだけど、物語の世界だけはもう少しカッコイイ主人公像でいて欲しい。
後味は悪くなかったですが、素材が良かっただけにちょっと残念。
深緑さんは『ベルリンは晴れているか』なども気になるので、他作品も読んでみたいです。
個人的評価:★★★
2021年2月 読書メーターまとめ
2月に読んだ本を読書メーターでまとめました。
仕事柄、本屋大賞のノミネート作品をすべて読まなくてはいけなかったのですが、
ひとまず2月で全部読了!(レビューはおいおい書きます)
2月の読書メーター
読んだ本の数:16(小説8冊・漫画7冊・雑誌1冊)
読んだページ数:3794
ナイス数:604
推し、燃ゆの感想
あぁ芥川賞だと思った。このまま読み進めていったら暗い闇に飲み込まれそうになってしまう。私には幸か不幸か推しの存在はないけれど、アイドルはそういえば「偶像」という意味だったと思い出した。「推しのいない人生は余生」という笑ってしまうほどに強烈な言葉。推しに依存することでかろうじて自分を保つあかりの私生活が抜け殻のようで、常に自らを俯瞰しているような感覚が抜けなかった。内省的でありながらも、常に破滅を望んでいるかのような。これが彼女の長い人生の中の一幕を切り取ったエピソードであることを願うばかり…。
読了日:02月06日 著者:宇佐見りん
葬送のフリーレン (1) (少年サンデーコミックス)の感想
単なるファンタジーと思ったら大間違い!魔王を倒した勇者一行の後日譚…と思ったら、勇者すらも死んだ後のお話。主人公は長生きのエルフ・フリーレンです。勇者ヒンメルとの回想シーンがあちこちで入ってくるのですが、これがまた色々な意味でイケメンすぎる!人間とは歳の取り方が全く違うフリーレンの発言を否定することなく、いつでも笑って受け止めてくれる器の大きさ。エピソードがどれも切なく良い話で、思わず涙腺を刺激されます。決して派手ではないのに、とにかく引き込まれる漫画です。
読了日:02月06日 著者:
葬送のフリーレン (2) (少年サンデーコミックス)の感想
めちゃめちゃ可憐そうなのに何にも動じないフェルンと、見た目はカッコイイのに中身残念なシュタルクという仲間を得て、3人のあれやこれやという掛け合いが楽しい巻。それでもやっぱりエルフとして悠久の時を過ごすフリーレンと、人間である彼らの時間の流れは残酷なほどに異なり、親しくなればなるほどやがてくる別れが辛くなってしまいそう。主人公のフリーレンの過去はまだまだ謎に包まれているけれど、回想シーンの断片から徐々につなぎ合わされる人物像から物語に深みが出てきました。
読了日:02月06日 著者:
葬送のフリーレン (3) (少年サンデーコミックス)の感想
あぁ、既刊本まで全部読んでしまった…。続きが気になって仕方がない。フリーレンの過去が明かされるにつれて、彼女の持つとんでもない魔力も明らかに。フリーレンの師匠、そしてシュタルクのお兄さん。追憶から物語が形作られていくという類稀なストーリー展開は、読者をどっぷりとこの世界に引き込んでくれます。物語全体に漂う物悲しさはそのままに、あちこちで差し込んでくるシュールな笑いも本作の魅力ですね!それにしてもこの世からいなくなってもなお残り続けるヒンメルの存在感とイケメン感ときたら。
読了日:02月06日 著者:
チ。―地球の運動について― (1) (ビッグコミックス)の感想
なんだこれめちゃくちゃ面白い!15世紀のヨーロッパを舞台に、当時異端とされていた「地動説」にのめりこんでいく神童ラファウ。地球の動きの美しさを求めて、異端審問官の目をかいくぐって研究するなんて、常軌を逸した行動にしか見えないかもしれない。でも命にかえてでもこの感動を後世に残したいという少年に胸を打たれる。静かで、美しく、それでいてものすごい熱量が流れ込んでくる。今後が楽しみ!
読了日:02月14日 著者:魚豊
チ。―地球の運動について― (2) (ビッグコミックス)の感想
全く面白さが落ちない2巻。タイトルの「チ。」とは「地」と「知」をかけているのだろうか。真実を知ることにはあまりにも重い代償を払わなければならない。C教に反して宇宙の真実を追い求めることは異端だけれど、登場人物たちはみなその思想を絶やすまいとする。火炙りになる、目を焼かれる、拷問を受ける…そんな身体的苦痛をものともせず探求し続けた人たちのおかげで、今の常識があるのだろうなぁ。夜空をゆっくり眺めたくなりました。
読了日:02月14日 著者:魚豊
琥珀色の空想汽譚 (リュエルコミックス)の感想
これは素晴らしすぎるイラスト集…!オールカラーで、果てしなく世界が広がります。空飛ぶ古書挺には、心に傷を負ったさまざまなお客さんが訪れる。スチームパンク的なうっとりするような衣装と、可愛い女の子たちが目の保養。イラスト集とはいえ、ひとつのストーリーとなっているところが良いですね。設定を細部まで作り込んでいるからこそのこの世界観。本を閉じた後にふと珈琲と古書の香りが漂ってきそう。
読了日:02月14日 著者:黒イ森
この本を盗む者はの感想
大好きなファンタジーのはずなのに、なかなか物語に入り込めなくて苦労しました。思った以上に時間がかかってしまった読書。深冬の父が管理人を務める「御倉館」の巨大書庫から本が盗まれると、ブックカースと呼ばれる本の呪いが発動し、深冬が物語の世界に入り込んでしまうという設定。物語世界で犯人を捕まえない限り元の世界に戻ることはできない。地下洞窟にいる銀の獣を描いた第3章や、すべての人が忽然と消えた街に入り込む第4章はとても映像化でした。
読了日:02月19日 著者:深緑 野分
お探し物は図書室までの感想
心にグサグサと刺さって、ほろりと泣けて、明日への一歩を踏み出す勇気が湧いてくる作品でした。コミュニティハウスの図書室にはあらゆる仕事上の悩みを抱えた人たちがやってくる。存在感のある見た目の司書・小町さんは、希望の本と一緒に、現状を打破するきっかけになる本を一冊渡してくれる。全く関係のない、興味がないと思える本から「自分を変えよう」という第一歩になるのだから、小町さんは本当にすごい!転職をしたいがその気力すらない、ニートから抜け出せない、人生の目的を見失ってしまった…仕事に悩むすべての人の心に響く作品。
読了日:02月19日 著者:青山 美智子
52ヘルツのクジラたち (単行本)の感想
涙腺崩壊。あまりの面白さに一気読みでした。かつてひどい虐待を受けて育ったキナコ。アンさんの助けを得て第二の人生を歩み始めるも、なぜか今は海辺の町で誰にも知られずにひっそりと暮らしている。そこで出会ったのは、明らかに虐待を受けていると思われる少年。声を出せない少年はどんな家庭環境なのか?なぜキナコは田舎に一人で移住してきたのか?現在と過去のエピソードが交互に語られていき、やがて明らかになる真実はあまりにも哀しい。辛いときに辛いと声を上げることの難しさ、それを気付くことのできる人間になりたいと思う。
読了日:02月20日 著者:町田 そのこ
九龍ジェネリックロマンス 4 (ヤングジャンプコミックス)の感想
物語はそんなに単純ではなくなってきた第4巻。金魚の視点で描かれた世界は何かの伏線なのだろうか。ジルコニアンにはジルコニアンの輝きがある。何が本物で何が偽物なのか、そしてそれが本当に大切なのかどうかが分からなくなる。二転三転する謎と、新たに浮上した工藤くんの過去。ますます読めない展開になってきました。そしてこの漫画に出てくる食べ物はいつも美味しそうでお腹が空きます…!
読了日:02月21日 著者:眉月 じゅん
犬がいた季節の感想
胸がぎゅっとしめつけられるような切なく優しい青春小説。昭和、平成、令和。移りゆく季節とともに、私も高校生だった頃の記憶が洪水のように流れ込んできた。捨て犬コーシローの目から見る世界はいつもキラキラしていて桜の花びらが舞っている。必死に背伸びをして、相手の言動に一喜一憂して、伝えたい想いを飲み込みそれぞれの道を歩んでゆく。常にSNSで繋がっている現代と違って、連絡先を聞かなければ二度と再会することのない時代だったなぁ。最終章は幸せな気持ちになりました。カバー下には嬉しいサプライズが!
読了日:02月21日 著者:伊吹 有喜
八月の銀の雪の感想
理系は苦手な分野のはずなのに、著者の柔らかく包み込むような表現力がクッションとなり一気に読み進めてしまいました。思い通りにいかない就活に悩む大学生とベトナム人コンビニ定員を描いた表題作は、どこへ着地するのだろうと思っていたけれど、思いもよらぬ壮大な話へと繋がっていて驚いた。どの作品も何でもない小さな日常を切り取ったエピソードから、登場人物を掘り下げていき最後には静かな感動が広がる。はるか昔から連綿と続く生物や大自然の神秘は、人間関係に疲れ果てている現代人の心をそっと癒してくれる。
読了日:02月21日 著者:伊与原 新
自転しながら公転するの感想
主人公の都と同じ世代なだけに、心がえぐられるようでした。30代になってもうまくいかない恋愛、実家暮らしで親の看病、ワーキングプアの契約社員…。共感度100%というのも納得で、世の中に都のような境遇の女性達がどれだけ多いのかというのを実感する。都の母親は、病気とはいえ子離れできない毒親のように最初は思えたものの、母親の視点からも語られることでまるで印象が変わることに気付く。頑張っているのにうまくいかない、婚活も仕事もする気力がない、将来が不安でたまらない。そんな世の中のすべての女性たちに読んで欲しい。
読了日:02月27日 著者:山本 文緒
逆ソクラテスの感想
伊坂作品はどうも今まで苦手で避けていたのですが、本作は痛快かつ爽快な短編集でとても読みやすかった!小学生が主人公で、彼らが大人になったときに過去を振り返るというスタイルは、今日々の生活に疲れた大人達にキラキラとした感動を呼び覚ましてくれます。それでも、優しさだけの物語ではなくピリッと毒のあるユーモアもあり。「でも、僕はそうは思わない」たった一言なのに、なんて重たい言葉なんだろう。愛想笑いを浮かべたり、相手に迎合するほうが格段に生きやすい。大人になってすら、相手に反論することの難しさを実感します。
読了日:02月27日 著者:伊坂 幸太郎
ナショナル ジオグラフィック日本版 2021年2月号[雑誌]の感想
今回は新天地での生活を求めて移住の決断を下した女性たちの記事が印象的でした。世界はコロナ一色だったけれど、その裏では深刻化する干ばつや、作物を食い荒らすバッタの大発生など異常気象による食糧不足に悩まされていることを知る。経済的な理由から別の国の男性と契約結婚する女性、暴力から国外に脱出する女性…世界の女性たちは本当に強い、と思いました。彼女たちが少しでもより良い生活を送れるような世界が来ることを祈ります。
読了日:02月28日 著者:
読書メーター
仕事柄、本屋大賞のノミネート作品をすべて読まなくてはいけなかったのですが、
ひとまず2月で全部読了!(レビューはおいおい書きます)
2月の読書メーター
読んだ本の数:16(小説8冊・漫画7冊・雑誌1冊)
読んだページ数:3794
ナイス数:604

あぁ芥川賞だと思った。このまま読み進めていったら暗い闇に飲み込まれそうになってしまう。私には幸か不幸か推しの存在はないけれど、アイドルはそういえば「偶像」という意味だったと思い出した。「推しのいない人生は余生」という笑ってしまうほどに強烈な言葉。推しに依存することでかろうじて自分を保つあかりの私生活が抜け殻のようで、常に自らを俯瞰しているような感覚が抜けなかった。内省的でありながらも、常に破滅を望んでいるかのような。これが彼女の長い人生の中の一幕を切り取ったエピソードであることを願うばかり…。
読了日:02月06日 著者:宇佐見りん

単なるファンタジーと思ったら大間違い!魔王を倒した勇者一行の後日譚…と思ったら、勇者すらも死んだ後のお話。主人公は長生きのエルフ・フリーレンです。勇者ヒンメルとの回想シーンがあちこちで入ってくるのですが、これがまた色々な意味でイケメンすぎる!人間とは歳の取り方が全く違うフリーレンの発言を否定することなく、いつでも笑って受け止めてくれる器の大きさ。エピソードがどれも切なく良い話で、思わず涙腺を刺激されます。決して派手ではないのに、とにかく引き込まれる漫画です。
読了日:02月06日 著者:

めちゃめちゃ可憐そうなのに何にも動じないフェルンと、見た目はカッコイイのに中身残念なシュタルクという仲間を得て、3人のあれやこれやという掛け合いが楽しい巻。それでもやっぱりエルフとして悠久の時を過ごすフリーレンと、人間である彼らの時間の流れは残酷なほどに異なり、親しくなればなるほどやがてくる別れが辛くなってしまいそう。主人公のフリーレンの過去はまだまだ謎に包まれているけれど、回想シーンの断片から徐々につなぎ合わされる人物像から物語に深みが出てきました。
読了日:02月06日 著者:

あぁ、既刊本まで全部読んでしまった…。続きが気になって仕方がない。フリーレンの過去が明かされるにつれて、彼女の持つとんでもない魔力も明らかに。フリーレンの師匠、そしてシュタルクのお兄さん。追憶から物語が形作られていくという類稀なストーリー展開は、読者をどっぷりとこの世界に引き込んでくれます。物語全体に漂う物悲しさはそのままに、あちこちで差し込んでくるシュールな笑いも本作の魅力ですね!それにしてもこの世からいなくなってもなお残り続けるヒンメルの存在感とイケメン感ときたら。
読了日:02月06日 著者:

なんだこれめちゃくちゃ面白い!15世紀のヨーロッパを舞台に、当時異端とされていた「地動説」にのめりこんでいく神童ラファウ。地球の動きの美しさを求めて、異端審問官の目をかいくぐって研究するなんて、常軌を逸した行動にしか見えないかもしれない。でも命にかえてでもこの感動を後世に残したいという少年に胸を打たれる。静かで、美しく、それでいてものすごい熱量が流れ込んでくる。今後が楽しみ!
読了日:02月14日 著者:魚豊

全く面白さが落ちない2巻。タイトルの「チ。」とは「地」と「知」をかけているのだろうか。真実を知ることにはあまりにも重い代償を払わなければならない。C教に反して宇宙の真実を追い求めることは異端だけれど、登場人物たちはみなその思想を絶やすまいとする。火炙りになる、目を焼かれる、拷問を受ける…そんな身体的苦痛をものともせず探求し続けた人たちのおかげで、今の常識があるのだろうなぁ。夜空をゆっくり眺めたくなりました。
読了日:02月14日 著者:魚豊

これは素晴らしすぎるイラスト集…!オールカラーで、果てしなく世界が広がります。空飛ぶ古書挺には、心に傷を負ったさまざまなお客さんが訪れる。スチームパンク的なうっとりするような衣装と、可愛い女の子たちが目の保養。イラスト集とはいえ、ひとつのストーリーとなっているところが良いですね。設定を細部まで作り込んでいるからこそのこの世界観。本を閉じた後にふと珈琲と古書の香りが漂ってきそう。
読了日:02月14日 著者:黒イ森

大好きなファンタジーのはずなのに、なかなか物語に入り込めなくて苦労しました。思った以上に時間がかかってしまった読書。深冬の父が管理人を務める「御倉館」の巨大書庫から本が盗まれると、ブックカースと呼ばれる本の呪いが発動し、深冬が物語の世界に入り込んでしまうという設定。物語世界で犯人を捕まえない限り元の世界に戻ることはできない。地下洞窟にいる銀の獣を描いた第3章や、すべての人が忽然と消えた街に入り込む第4章はとても映像化でした。
読了日:02月19日 著者:深緑 野分

心にグサグサと刺さって、ほろりと泣けて、明日への一歩を踏み出す勇気が湧いてくる作品でした。コミュニティハウスの図書室にはあらゆる仕事上の悩みを抱えた人たちがやってくる。存在感のある見た目の司書・小町さんは、希望の本と一緒に、現状を打破するきっかけになる本を一冊渡してくれる。全く関係のない、興味がないと思える本から「自分を変えよう」という第一歩になるのだから、小町さんは本当にすごい!転職をしたいがその気力すらない、ニートから抜け出せない、人生の目的を見失ってしまった…仕事に悩むすべての人の心に響く作品。
読了日:02月19日 著者:青山 美智子

涙腺崩壊。あまりの面白さに一気読みでした。かつてひどい虐待を受けて育ったキナコ。アンさんの助けを得て第二の人生を歩み始めるも、なぜか今は海辺の町で誰にも知られずにひっそりと暮らしている。そこで出会ったのは、明らかに虐待を受けていると思われる少年。声を出せない少年はどんな家庭環境なのか?なぜキナコは田舎に一人で移住してきたのか?現在と過去のエピソードが交互に語られていき、やがて明らかになる真実はあまりにも哀しい。辛いときに辛いと声を上げることの難しさ、それを気付くことのできる人間になりたいと思う。
読了日:02月20日 著者:町田 そのこ

物語はそんなに単純ではなくなってきた第4巻。金魚の視点で描かれた世界は何かの伏線なのだろうか。ジルコニアンにはジルコニアンの輝きがある。何が本物で何が偽物なのか、そしてそれが本当に大切なのかどうかが分からなくなる。二転三転する謎と、新たに浮上した工藤くんの過去。ますます読めない展開になってきました。そしてこの漫画に出てくる食べ物はいつも美味しそうでお腹が空きます…!
読了日:02月21日 著者:眉月 じゅん

胸がぎゅっとしめつけられるような切なく優しい青春小説。昭和、平成、令和。移りゆく季節とともに、私も高校生だった頃の記憶が洪水のように流れ込んできた。捨て犬コーシローの目から見る世界はいつもキラキラしていて桜の花びらが舞っている。必死に背伸びをして、相手の言動に一喜一憂して、伝えたい想いを飲み込みそれぞれの道を歩んでゆく。常にSNSで繋がっている現代と違って、連絡先を聞かなければ二度と再会することのない時代だったなぁ。最終章は幸せな気持ちになりました。カバー下には嬉しいサプライズが!
読了日:02月21日 著者:伊吹 有喜

理系は苦手な分野のはずなのに、著者の柔らかく包み込むような表現力がクッションとなり一気に読み進めてしまいました。思い通りにいかない就活に悩む大学生とベトナム人コンビニ定員を描いた表題作は、どこへ着地するのだろうと思っていたけれど、思いもよらぬ壮大な話へと繋がっていて驚いた。どの作品も何でもない小さな日常を切り取ったエピソードから、登場人物を掘り下げていき最後には静かな感動が広がる。はるか昔から連綿と続く生物や大自然の神秘は、人間関係に疲れ果てている現代人の心をそっと癒してくれる。
読了日:02月21日 著者:伊与原 新

主人公の都と同じ世代なだけに、心がえぐられるようでした。30代になってもうまくいかない恋愛、実家暮らしで親の看病、ワーキングプアの契約社員…。共感度100%というのも納得で、世の中に都のような境遇の女性達がどれだけ多いのかというのを実感する。都の母親は、病気とはいえ子離れできない毒親のように最初は思えたものの、母親の視点からも語られることでまるで印象が変わることに気付く。頑張っているのにうまくいかない、婚活も仕事もする気力がない、将来が不安でたまらない。そんな世の中のすべての女性たちに読んで欲しい。
読了日:02月27日 著者:山本 文緒

伊坂作品はどうも今まで苦手で避けていたのですが、本作は痛快かつ爽快な短編集でとても読みやすかった!小学生が主人公で、彼らが大人になったときに過去を振り返るというスタイルは、今日々の生活に疲れた大人達にキラキラとした感動を呼び覚ましてくれます。それでも、優しさだけの物語ではなくピリッと毒のあるユーモアもあり。「でも、僕はそうは思わない」たった一言なのに、なんて重たい言葉なんだろう。愛想笑いを浮かべたり、相手に迎合するほうが格段に生きやすい。大人になってすら、相手に反論することの難しさを実感します。
読了日:02月27日 著者:伊坂 幸太郎
![ナショナル ジオグラフィック日本版 2021年2月号[雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51wLk5jsVwL._SL120_.jpg)
今回は新天地での生活を求めて移住の決断を下した女性たちの記事が印象的でした。世界はコロナ一色だったけれど、その裏では深刻化する干ばつや、作物を食い荒らすバッタの大発生など異常気象による食糧不足に悩まされていることを知る。経済的な理由から別の国の男性と契約結婚する女性、暴力から国外に脱出する女性…世界の女性たちは本当に強い、と思いました。彼女たちが少しでもより良い生活を送れるような世界が来ることを祈ります。
読了日:02月28日 著者:
読書メーター
『推し、燃ゆ』宇佐見りん

推しが炎上した。ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある日、推しがファンを殴った。(「BOOK」データベースより)
芥川賞受賞作ですね。おめでとうございます!
しばらく前から、本屋さんの店員がものすごくこの本を推してたので気になっていました。
タイトルからも装丁からも、そこはかとないセンスを感じます。
さて、この本を読んで最初の感想といえば「あぁ、芥川賞だ」でした。(もちろん良い意味で)
直木賞は大衆小説なので読みやすい、芥川賞は純文学なのでとっつきづらいという印象でしたが、
本作『推し、燃ゆ』は純文学でありながらも、読みづらいマイナスイメージを払拭してくれました。
今や「推し活」という言葉が一般的になるぐらい、応援したい推しがいるのが当たり前なんですねー。
私は、幸か不幸か推しの存在はないのですが、よく札幌ドームでジャニーズのコンサートが開催される時の
あの熱狂ぶりは、見ているこちらまで元気をもらっていました。
さて、本作の主人公あかりは、「推し」を全身全霊を傾けて推すことで自分を保っていました。
SNSの中ではしっかりもののキャラを演じていますが、あかりの私生活はボロボロ。
きちんと学校へ通って勉強するという当たり前のこともできず、かといって就職することもできない。
部屋は荒れ放題で、家族とのコミュニケーションすらままならず、コミュ障の域を超えています。
でもあかりは決してだらしないわけではなく、一生懸命やっているのにすべてが上手くいかない。
読者も決して感情移入はできないのですが、彼女なりの思考になんとも歯がゆさを感じるのです。
そんなあかりと外の世界を繋ぐ唯一の存在が「推し」。
アイドルの真幸くんが配信する動画配信を観て、一緒にご飯を食べ、同じ時間を共有する。
「推しのいない人生は余生」と言い切るぐらい、推しに依存した生活を送っています。
そんな中、真幸くんがファンを殴ったことでたちまちSNSが炎上。(これが燃ゆということか)
推しはいつまでも推しではいられない。いつかは必ずただの人になるということ。
内省的でありながらも、常に破滅を望んでいるかのようなあかりの独白が、読んでて本当にキツイ。
このまま読み進めていったら暗い闇に飲み込まれそう、と思いつつも一気に読み切りました…!
彼女は今後どうなるのだろうか…… もやっとした気持ちを抱えたまま本を閉じました。
それにしても宇佐見りんさん、大学生作家ですか。
二十歳そこそこでこの達観した視点は、末恐ろしいと思いましたΣ(・口・)今後が楽しみですね!
個人的評価:★★★★
『滅びの前のシャングリラ』凪良ゆう

「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして―荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、いまわのきわまでに見つけられるのか。圧巻のラストに息を呑む。滅び行く運命の中で、幸せについて問う傑作。(「BOOK」データベースより)
凪良ゆうさんの作品を読むのは、去年本屋大賞を受賞した『流浪の月』に続き2作目です。
この作家さんって、もともとBL作家さんなんですってねー
去年「BL作家が本屋大賞!」とかなり話題になって、興味を持った記憶があります。
BLのほうは未読ですが少なくとも一般文芸としての凪良作品は、個人的にはものすごく好みです。
さて、2021年も本屋大賞にノミネートされている本作『滅びの前のシャングリラ』。
一言で言うと、「本を読んでいる」という行為も忘れるくらい寝食を忘れて読み耽りました…!
小惑星が衝突し、1ヶ月後に人類が滅亡することがわかったとしたら。
自分ならどうするだろうか。絶望する?泣き喚く?それとも精一杯最後の日まで生きる?
理性のたがが外れた人間は、瞬く間に墜ちるところまで墜ちる。
今はどんな小さなことでもすぐにSNSで拡散されます。略奪、殺人が横行し狂った世界になるのはあっという間。
何でもないような日常が、あっという間に崩れ去っていく恐怖が本作で描かれています。
読んでいて、「理性」というものはなんと脆いものかと。
人間の持つ本能や欲求という感情は、法で縛られていないとたちまち暴走してしまうのですね。
無法地帯とはまさにこのこと。
でも、そんな絶望の中にあっても最後まで必死にあがく人たちもいます。
どうしても好きな子を守りたい冴えない高校生・友樹と、元ヤンの母親・静香。
暴力という性癖から逃れられないヤクザ・信士。そして底辺から上り詰めた歌姫・Loco。
ある意味、平和な世界ではアウトサイダーだった4人。
滅びゆく世界の中で彼らがひとつ、またひとつと小さな幸せを見つけていく様にただただ泣けました。
いろんな意味で衝撃的な物語で、読了後にはしばらく呆然としてしまいました。。。
個人的評価:★★★★+
2021年1月 読書メーターまとめ
1月に読んだ本を読書メーターでまとめました。(久しぶりだなーこれw)
読書リハビリ最初の月にしては、なかなか読めたかな。
1月の読書メーター
読んだ本の数:16(小説7冊・漫画8冊・雑誌1冊)
読んだページ数:4191
ナイス数:514
三体の感想
2021年の一冊目。結婚してから読書量がとんと減ってしまったので、リハビリにと選んだ本でしたがあまりにも面白くて一日で読了!話題の中国SF、想像以上にハマってしまいました。文化大革命を描いた第一部は、最初は少しだけ苦戦。でもVRゲーム「三体」が登場してから途端にエンターテイメント性を増してきます。「脱水…」がちょっとクセになりそう(笑)巨大ピラミッドや振り子モニュメントはこれでもかというほど想像力を刺激されるし、ゴースト・カウントダウンなどのサスペンス要素は、自らの常識を揺さぶってくる。続編も楽しみです。
読了日:01月03日 著者:劉 慈欣
戦争は女の顔をしていない 2の感想
1巻同様に、可愛い絵柄にカモフラージュされてはいるけれど凄まじい内容。国のためにと女性としての幸せを捨て戦地に赴くことを望んだのは、やはり時代だったのだろうと思う。自慢の長い髪を失い坊主になり、スカートを捨て男と同じ格好をして、彼女たちが得られた幸福とは一体なんだったのだろうか。敵の骨を砕きながら進む車輪、全滅したせいで大鍋の料理が無駄になったという料理番。彼女たちの心にも、そして読者の心にも決して拭い切れない黒い感情を残していく。
読了日:01月03日 著者:小梅 けいと
know (ハヤカワ文庫JA)の感想
スピード感のあるSFでサクサク読み進められました。電子葉が脳に移植され、あらゆる情報を瞬時に取得できるようになった時代。昔は調べるときは紙の辞書を引いていました。今やスマホですぐに検索ができる時代です。でも時代がさらに進めば…脳内で瞬時に検索・処理ができてしまう。つまり「検索」することと「知っている」ことは同じ意味!便利なようでなんと危うい超情報化時代なのだろうか…。この世で最高の情報処理能力を持つ少女・知ルは、感情がありながらもやはりロボットのように見える。人類の行き着く先を想像し、少しぞくりとした。
読了日:01月06日 著者:野崎 まど
ナショナル ジオグラフィック日本版 2021年1月号[雑誌]の感想
2020年はパンデミックにより、他国間の往来がなくなったことに加えて、他国の情報まで少なくなり何となく焦りを覚えた。毎日入ってくる情報といえば、明けても暮れても感染者の人数だけ。閉ざされた環境下で、繰り返し同じニュースを聞いて一喜一憂することに嫌気が差し、忙しさで定期購読を中止していたナショジオを再開することにしました。やはりナショジオ強し!世界中に写真家がいるから、日本のニュースでは知ることのできない、ありとあらゆる国の「今」を教えてくれる。表紙はコロナ対応に疲れ切ったベルギーの看護師2人。
読了日:01月10日 著者:
呪術廻戦 14 (ジャンプコミックス)の感想
宿儺の表紙がカッコ良すぎる!もはやひれ伏すしかない圧倒的な領域展開。それに凄まじい展開続きで、気持ちの整理が追いつかない…!次々と一般人を巻き込む死闘に読めば読むほど絶望的になるけど、救いがあると信じたい。次巻は野薔薇の過去編か?この作者さんのことなので誰が最後まで生き残るのか決して油断はできないし、早く読みたいけど読むのが怖い。
読了日:01月10日 著者:芥見 下々
チェンソーマン 10 (ジャンプコミックス)の感想
まともな神経では読めないチェンソーマン。これを週刊少年ジャンプで連載していたとは未だに信じられない!どこまでもシュールで、芸術的ですらある。こんなにも先が読めない漫画は初めて。マキマさんが本気で爆笑しているシーンにはぞくり。コベニちゃんのポンコツ感がもはや癒しでしかない。さりげなく62コンボ。オーダー入りました!ファミリー!あぁ頭がおかしくなるw
読了日:01月10日 著者:藤本 タツキ
SPY×FAMILY 6 (ジャンプコミックス)の感想
闇テニスに爆笑。ロイドの「多少かじった程度」は一般人のプロレベルか。笑 そして夜帷の冷静沈着な見た目に反して分かりやすい「好き」に終始ニマニマしちゃいました。もちろんヨルさんの可愛さには負けるけど…!そしてアーニャとベッキーのセレブなお買い物と、それを見守るマーサの関係がキュートすぎる。
読了日:01月11日 著者:遠藤 達哉
九龍ジェネリックロマンス 1 (ヤングジャンプコミックス)の感想
九龍城好きとしては、興味津々だったマンガ。増築に増築を重ねたこの猥雑な感じ、その日暮らしの住人たち、でも一度魅了されたらもう離れられない…この雰囲気が抜群に好きです!九龍の不動産屋の日常と恋愛を描いた物語かと思いきや、おやラストは不穏な空気。途端に非日常とミステリに突入します。鯨井さんは一見クールな美女に思えるけど、全然そんなことはなくて中身はものすごく可愛い。スイカとタバコは合うんかな…笑
読了日:01月15日 著者:眉月 じゅん<
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九龍ジェネリックロマンス 2 (ヤングジャンプコミックス)の感想
途端にSFミステリー色が強くなったきた!鯨井さんと工藤さんの過去編(ということになるのだろうか?)。何が本物なのか?新キャラ蛇沼先生は、本気で気持ち悪く真の意図が掴めない。鯨井さんに執着する理由、工藤さんの苛立ちと焦り、一体何があった?何はともあれ、楊明と鯨井さんが2人でレモンチキンを頬張っているシーンがめちゃめちゃ美味しそう。この漫画、女子たちがみんな可愛すぎる!
読了日:01月15日 著者:眉月 じゅん
九龍ジェネリックロマンス 3 (ヤングジャンプコミックス)の感想
登場人物の過去が少しずつ明らかになるにつれて、だんだんとストーリーが理解できるようになってきた反面、新たな謎が次々と出てくる。何が本物で何が偽物なのか?でも偽物だとしても、美味しいものを食べたり、ちょっとした言動にときめいたりと新たな記憶が刻まれているのも事実で。今後が気になる!!九龍の描写は相変わらず素晴らしい。生活のすべてがこの九龍で完結しちゃうんだもんなぁ。かつて香港にあった本物の九龍城砦はもう取り壊されてしまったけど、こんな場所で確かに日々の生活を営んでいる人たちがいたことに感慨深い気持ちになる。
読了日:01月15日 著者:眉月 じゅん
太陽の黄金(きん)の林檎〔新装版〕 (ハヤカワ文庫SF)の感想
ブラッドベリの作品を読むと、どこかノスタルジックな気持ちにさせられます。寒い夜に深海からやってくる何かを描いた「霧笛」はラヴクラフトを彷彿とさせる面白さ。二つの町が競い合うように城壁の形を変えていく「金の凧、銀の風」は童話風で楽しい。少年の外見のまま年を取らなくなってしまった男の話「歓迎と別離」は、萩尾望都さんでぜひ漫画化して欲しい。特筆すべきはやはり表題作「太陽の黄金の林檎」で、冷え切った地球を温めるために太陽から火を持って帰るなんて発想が素晴らしすぎる!解説が中島梓(栗本薫)さんだったのも嬉しかった。
読了日:01月17日 著者:レイ ブラッドベリ
薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)の感想
先にコミックのほうを読んでいたのでキャラクターのイメージがしやすかったです。ラノベらしくサクサク読み進められる軽さと、あらゆる人物の思惑あふれる後宮もので彩雲国をちょっとだけ思い出したり。主人公の猫猫がその辺の男性よりも男らしい性格で、歯に衣着せぬ物言いが小気味良い!生まれ育った環境のせいなのか、薬屋という仕事のせいなのか、はたまた生まれ持ったものなのか。頭がよく一歩引いたところから眺める冷静な判断に好感が持てます。
読了日:01月20日 著者:日向 夏
北北西に曇と往け 5 (ハルタコミックス)の感想
相変わらずの美麗すぎる絵を隅々まで堪能!アイスランドの人を寄せ付けない荒涼とした大自然の中、慧とリリヤの距離が少しずつ縮まっていることにニマニマ。本当この2人、自然体で笑うようになったし、感情をしっかり表に出すようになったなぁ。三知嵩はお兄ちゃんの前ではまるで子供だけど、大人からうまく情報を引き出すような話術を見ていると慧の探偵稼業の助けになりそうな気も。巻末に収録されていた補遺も面白かったです。少年時代の慧のエピソード、まだまだ謎は尽きない…!あとホットドッグ食べたくなりました。
読了日:01月23日 著者:入江 亜季
祝祭と予感の感想
「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ。また彼らに再会できたという感動と、本編で語られなかったエピソードを読むことができてますます作品に深みが出ましたね。宮沢賢治の「春と修羅」が好きだという理由で岩手まで行ってしまった自分としては、「袈裟と鞦韆」(これブランコって読むんだ!)が一番心に沁みました。作曲家の重荷は計り知れない。でも読み終わった後に脳裏に浮かんだのは緑溢れるホップ畑でした。ホフマンと風間塵との初めての出会いを描いた「伝説と予感」もすごく良かった。まるで初恋のようにキラキラした瞬間でした。
読了日:01月23日 著者:恩田 陸
オルタネートの感想
最初こそ作者がジャニーズというバイアスがかかっているせいで斜に構えて読み始めた部分もありましたが、これが想像以上に面白い。料理人の父と微妙な距離を起きつつも自らもその背中を追いかける蓉。マッチングアプリ「オルタネート」に絶対的な信頼を置き相手を待ち望んでいる凪津。そして高校を中退したがかつての親友を忘れられず上京した尚志。3人の物語が時には離れ、時には近づきつつも終盤に向かってぐわぁーっと怒涛のごとく収束していき読んでいて興奮が止まらなかった。瑞々しい青春小説でした。
読了日:01月24日 著者:加藤シゲアキ
滅びの前のシャングリラ (単行本)の感想
小惑星が衝突し、1ヶ月後に人類が滅亡することがわかったら。今まで築き上げてきた生活はあっという間に「無」になる。理性のたがが外れた人間は、瞬く間に墜ちるところまで墜ちる。略奪、殺人が横行し狂った世界になるのはあっという間だ。そんな中、好きな子を守りたい友樹、元ヤンの母親、暗い過去を持つヤクザ、底辺から上り詰めた歌姫。様々な感情と思惑が交錯し、最期の日を迎える…絶望の中で人々は何を見つけるのか。極限の状態にある人間の心理描写が巧く、本を読んでいることすら忘れてしまうほどのめり込んだ。衝撃的な物語でした。
読了日:01月30日 著者:凪良 ゆう
読書メーター
読書リハビリ最初の月にしては、なかなか読めたかな。
1月の読書メーター
読んだ本の数:16(小説7冊・漫画8冊・雑誌1冊)
読んだページ数:4191
ナイス数:514

2021年の一冊目。結婚してから読書量がとんと減ってしまったので、リハビリにと選んだ本でしたがあまりにも面白くて一日で読了!話題の中国SF、想像以上にハマってしまいました。文化大革命を描いた第一部は、最初は少しだけ苦戦。でもVRゲーム「三体」が登場してから途端にエンターテイメント性を増してきます。「脱水…」がちょっとクセになりそう(笑)巨大ピラミッドや振り子モニュメントはこれでもかというほど想像力を刺激されるし、ゴースト・カウントダウンなどのサスペンス要素は、自らの常識を揺さぶってくる。続編も楽しみです。
読了日:01月03日 著者:劉 慈欣

1巻同様に、可愛い絵柄にカモフラージュされてはいるけれど凄まじい内容。国のためにと女性としての幸せを捨て戦地に赴くことを望んだのは、やはり時代だったのだろうと思う。自慢の長い髪を失い坊主になり、スカートを捨て男と同じ格好をして、彼女たちが得られた幸福とは一体なんだったのだろうか。敵の骨を砕きながら進む車輪、全滅したせいで大鍋の料理が無駄になったという料理番。彼女たちの心にも、そして読者の心にも決して拭い切れない黒い感情を残していく。
読了日:01月03日 著者:小梅 けいと

スピード感のあるSFでサクサク読み進められました。電子葉が脳に移植され、あらゆる情報を瞬時に取得できるようになった時代。昔は調べるときは紙の辞書を引いていました。今やスマホですぐに検索ができる時代です。でも時代がさらに進めば…脳内で瞬時に検索・処理ができてしまう。つまり「検索」することと「知っている」ことは同じ意味!便利なようでなんと危うい超情報化時代なのだろうか…。この世で最高の情報処理能力を持つ少女・知ルは、感情がありながらもやはりロボットのように見える。人類の行き着く先を想像し、少しぞくりとした。
読了日:01月06日 著者:野崎 まど
![ナショナル ジオグラフィック日本版 2021年1月号[雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51O2Lh8z+-L._SL120_.jpg)
2020年はパンデミックにより、他国間の往来がなくなったことに加えて、他国の情報まで少なくなり何となく焦りを覚えた。毎日入ってくる情報といえば、明けても暮れても感染者の人数だけ。閉ざされた環境下で、繰り返し同じニュースを聞いて一喜一憂することに嫌気が差し、忙しさで定期購読を中止していたナショジオを再開することにしました。やはりナショジオ強し!世界中に写真家がいるから、日本のニュースでは知ることのできない、ありとあらゆる国の「今」を教えてくれる。表紙はコロナ対応に疲れ切ったベルギーの看護師2人。
読了日:01月10日 著者:

宿儺の表紙がカッコ良すぎる!もはやひれ伏すしかない圧倒的な領域展開。それに凄まじい展開続きで、気持ちの整理が追いつかない…!次々と一般人を巻き込む死闘に読めば読むほど絶望的になるけど、救いがあると信じたい。次巻は野薔薇の過去編か?この作者さんのことなので誰が最後まで生き残るのか決して油断はできないし、早く読みたいけど読むのが怖い。
読了日:01月10日 著者:芥見 下々

まともな神経では読めないチェンソーマン。これを週刊少年ジャンプで連載していたとは未だに信じられない!どこまでもシュールで、芸術的ですらある。こんなにも先が読めない漫画は初めて。マキマさんが本気で爆笑しているシーンにはぞくり。コベニちゃんのポンコツ感がもはや癒しでしかない。さりげなく62コンボ。オーダー入りました!ファミリー!あぁ頭がおかしくなるw
読了日:01月10日 著者:藤本 タツキ

闇テニスに爆笑。ロイドの「多少かじった程度」は一般人のプロレベルか。笑 そして夜帷の冷静沈着な見た目に反して分かりやすい「好き」に終始ニマニマしちゃいました。もちろんヨルさんの可愛さには負けるけど…!そしてアーニャとベッキーのセレブなお買い物と、それを見守るマーサの関係がキュートすぎる。
読了日:01月11日 著者:遠藤 達哉

九龍城好きとしては、興味津々だったマンガ。増築に増築を重ねたこの猥雑な感じ、その日暮らしの住人たち、でも一度魅了されたらもう離れられない…この雰囲気が抜群に好きです!九龍の不動産屋の日常と恋愛を描いた物語かと思いきや、おやラストは不穏な空気。途端に非日常とミステリに突入します。鯨井さんは一見クールな美女に思えるけど、全然そんなことはなくて中身はものすごく可愛い。スイカとタバコは合うんかな…笑
読了日:01月15日 著者:眉月 じゅん<
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途端にSFミステリー色が強くなったきた!鯨井さんと工藤さんの過去編(ということになるのだろうか?)。何が本物なのか?新キャラ蛇沼先生は、本気で気持ち悪く真の意図が掴めない。鯨井さんに執着する理由、工藤さんの苛立ちと焦り、一体何があった?何はともあれ、楊明と鯨井さんが2人でレモンチキンを頬張っているシーンがめちゃめちゃ美味しそう。この漫画、女子たちがみんな可愛すぎる!
読了日:01月15日 著者:眉月 じゅん

登場人物の過去が少しずつ明らかになるにつれて、だんだんとストーリーが理解できるようになってきた反面、新たな謎が次々と出てくる。何が本物で何が偽物なのか?でも偽物だとしても、美味しいものを食べたり、ちょっとした言動にときめいたりと新たな記憶が刻まれているのも事実で。今後が気になる!!九龍の描写は相変わらず素晴らしい。生活のすべてがこの九龍で完結しちゃうんだもんなぁ。かつて香港にあった本物の九龍城砦はもう取り壊されてしまったけど、こんな場所で確かに日々の生活を営んでいる人たちがいたことに感慨深い気持ちになる。
読了日:01月15日 著者:眉月 じゅん

ブラッドベリの作品を読むと、どこかノスタルジックな気持ちにさせられます。寒い夜に深海からやってくる何かを描いた「霧笛」はラヴクラフトを彷彿とさせる面白さ。二つの町が競い合うように城壁の形を変えていく「金の凧、銀の風」は童話風で楽しい。少年の外見のまま年を取らなくなってしまった男の話「歓迎と別離」は、萩尾望都さんでぜひ漫画化して欲しい。特筆すべきはやはり表題作「太陽の黄金の林檎」で、冷え切った地球を温めるために太陽から火を持って帰るなんて発想が素晴らしすぎる!解説が中島梓(栗本薫)さんだったのも嬉しかった。
読了日:01月17日 著者:レイ ブラッドベリ

先にコミックのほうを読んでいたのでキャラクターのイメージがしやすかったです。ラノベらしくサクサク読み進められる軽さと、あらゆる人物の思惑あふれる後宮もので彩雲国をちょっとだけ思い出したり。主人公の猫猫がその辺の男性よりも男らしい性格で、歯に衣着せぬ物言いが小気味良い!生まれ育った環境のせいなのか、薬屋という仕事のせいなのか、はたまた生まれ持ったものなのか。頭がよく一歩引いたところから眺める冷静な判断に好感が持てます。
読了日:01月20日 著者:日向 夏

相変わらずの美麗すぎる絵を隅々まで堪能!アイスランドの人を寄せ付けない荒涼とした大自然の中、慧とリリヤの距離が少しずつ縮まっていることにニマニマ。本当この2人、自然体で笑うようになったし、感情をしっかり表に出すようになったなぁ。三知嵩はお兄ちゃんの前ではまるで子供だけど、大人からうまく情報を引き出すような話術を見ていると慧の探偵稼業の助けになりそうな気も。巻末に収録されていた補遺も面白かったです。少年時代の慧のエピソード、まだまだ謎は尽きない…!あとホットドッグ食べたくなりました。
読了日:01月23日 著者:入江 亜季

「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ。また彼らに再会できたという感動と、本編で語られなかったエピソードを読むことができてますます作品に深みが出ましたね。宮沢賢治の「春と修羅」が好きだという理由で岩手まで行ってしまった自分としては、「袈裟と鞦韆」(これブランコって読むんだ!)が一番心に沁みました。作曲家の重荷は計り知れない。でも読み終わった後に脳裏に浮かんだのは緑溢れるホップ畑でした。ホフマンと風間塵との初めての出会いを描いた「伝説と予感」もすごく良かった。まるで初恋のようにキラキラした瞬間でした。
読了日:01月23日 著者:恩田 陸

最初こそ作者がジャニーズというバイアスがかかっているせいで斜に構えて読み始めた部分もありましたが、これが想像以上に面白い。料理人の父と微妙な距離を起きつつも自らもその背中を追いかける蓉。マッチングアプリ「オルタネート」に絶対的な信頼を置き相手を待ち望んでいる凪津。そして高校を中退したがかつての親友を忘れられず上京した尚志。3人の物語が時には離れ、時には近づきつつも終盤に向かってぐわぁーっと怒涛のごとく収束していき読んでいて興奮が止まらなかった。瑞々しい青春小説でした。
読了日:01月24日 著者:加藤シゲアキ

小惑星が衝突し、1ヶ月後に人類が滅亡することがわかったら。今まで築き上げてきた生活はあっという間に「無」になる。理性のたがが外れた人間は、瞬く間に墜ちるところまで墜ちる。略奪、殺人が横行し狂った世界になるのはあっという間だ。そんな中、好きな子を守りたい友樹、元ヤンの母親、暗い過去を持つヤクザ、底辺から上り詰めた歌姫。様々な感情と思惑が交錯し、最期の日を迎える…絶望の中で人々は何を見つけるのか。極限の状態にある人間の心理描写が巧く、本を読んでいることすら忘れてしまうほどのめり込んだ。衝撃的な物語でした。
読了日:01月30日 著者:凪良 ゆう
読書メーター
自己紹介ページを更新しました!

またブログを定期的に更新し始めたこともあり、
ずいぶん古かった自己紹介ページを更新しました!
写真は、2年前に沖縄に行ったときのものです(///∇//)
ま、顔隠してますけどww
▶︎ななこの自己紹介はこちら
『オルタネート』加藤シゲアキ

高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須となった現代。東京のとある高校を舞台に、若者たちの運命が、鮮やかに加速していく。全国配信の料理コンテストで巻き起こった“悲劇”の後遺症に思い悩む蓉。母との軋轢により、“絶対真実の愛”を求め続ける「オルタネート」信奉者の凪津。高校を中退し、“亡霊の街”から逃れるように、音楽家の集うシェアハウスへと潜り込んだ尚志。恋とは、友情とは、家族とは。そして、人と“繋がる”とは何か。デジタルな世界と未分化な感情が織りなす物語の果てに、三人を待ち受ける未来とは一体―。“あの頃”の煌めき、そして新たな旅立ちを端正かつエモーショナルな筆致で紡ぐ、新時代の青春小説。(「BOOK」データベースより)
今年の直木賞&本屋大賞ノミネート作品ですね!
本作『オルタネート』は、本来の自分だったらあまり手に取らないであろうジャンルです。
マッチングアプリ?青春小説?興味ないなぁ、なんて思いつつも仕事で必要なので読み始めました。
作者がジャニーズということもあり、どうしてもバイアスがかかっていたことも事実。
でも読み始めてその考えは一変。こんなにも引き込まれる文章を書かれる方だったとはΣ(・口・)
いや、これ想像以上に面白いですよ。
「オルタネート」という高校生限定マッチングアプリが必須になった、おそらくちょっと先の現代。
このアプリは友達や恋愛の相手を探すだけでなく、さまざまな情報網としても使われているのです。
ほとんどの高校生がアプリを使う中、アプリに馴染めない、またそもそも使う資格がない少数派もいます。
過去のトラウマを持ち、料理人の父と微妙な距離を起きつつも自らもその背中を追いかける蓉。
マッチングアプリ「オルタネート」に絶対的な信頼を置き、理想の相手を待ち望んでいる凪津。
そして高校を中退したが、かつて仲が良かった親友をどうしても忘れられず上京した尚志。
ある意味はぐれ者である3人のエピソードが、
ときには近づきつつ、ときには離れながら、終盤にむけて一気に収束していきます。
ラスト近くの交互に視点が入れ替わる緊張感と疾走感は、本当に鳥肌ものでしたね。
LGBTとかYouTuberとかが普通に出てくるあたり、時代が変わったなと思いましたが、
数年後にこれを読んだら、これがもう当たり前の世の中になっているのでしょうか。
蓉(いるる)とか、凪津(なづ)とか、えみくとか名前が覚え辛かったですがw
でもそんなことも瑣末に感じられるくらい、瑞々しい青春小説でした!
さてさて、本屋大賞受賞となるでしょうか??
個人的評価:★★★★
『祝祭と予感』恩田陸

大ベストセラー『蜜蜂と遠雷』、待望のスピンオフ短編小説集!大好きな仲間たちの、知らなかった秘密。入賞者ツアーのはざま亜夜とマサルとなぜか塵が二人のピアノの恩師・綿貫先生の墓参りをする「祝祭と掃苔」。芳ヶ江国際ピアノコンクールの審査員ナサニエルと三枝子の若き日の衝撃的な出会いとその後を描いた「獅子と芍薬」。作曲家・菱沼忠明が課題曲「春と修羅」を作るきっかけになった忘れ得ぬ教え子の追憶「袈裟と鞦韆」。ジュリアード音楽院プレ・カレッジ時代のマサルの意外な一面「竪琴と葦笛」。楽器選びに悩むヴィオラ奏者・奏へ天啓を伝える「鈴蘭と階段」。巨匠ホフマンが幼い塵と初めて出会った永遠のような瞬間「伝説と予感」。全6編。(「BOOK」データベースより)
直木賞&本屋大賞W受賞の『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ短編集です!
前作でいたく感動したとはいえ、読んだのはもう何年も前…
再読しないでスピンオフ読んでいいんかな?と思いましたが、読み始めたらたちまちあの感動が蘇りました。
めちゃめちゃ面白いです。
前作で描かれなかったエピソードだったりとか、彼らの後日譚が読めたのが本当に嬉しい。
やっぱり恩田さんの文章を読んでいると、不思議と脳内にピアノの音色が鳴り響くんです。
言葉を紡ぐだけで、繊細なメロディが流れるなんて素晴らしい表現力だと思います。
本作には、さまざまなキャラを主人公に据えた6つの短編が収録されています。
「祝祭と掃苔」
亜夜・マサル・塵が綿貫先生のお墓参りをするエピソード。
前作ではよき友人でありよきライバルだった3人が、和気藹々と会話をしている様子が楽しい。
そして亜夜もマサルも、毎回塵のことを「風間塵」とフルネームで呼ぶのにも笑いました。
「獅子と芍薬」
ピアノコンクールの審査員、ナサニエルと三枝子にまでスポットを当てるとは嬉しい驚きでした。
彼らの10代の頃のエピソードは新鮮で、2人ともこの頃からホフマンに傾倒していたのかと。笑
数十年経ち、生活も環境も変わる。けれど、2人の音楽に対する情熱は冷めることはないのですね。
「袈裟と鞦韆」
「鞦韆」=ぶらんこと呼ぶんですね!本作の中で一番好きで、最後にはほろりと涙が出ました。
前作で宮沢賢治の「春と修羅」を演奏するシーンがありましたが、この曲の誕生エピソードです。
作曲家の重荷は計り知れない。でも読み終わった後に脳裏に浮かんだのは緑溢れるホップ畑でした。
「竪琴と葦笛」
本作のイケメン枠・マサルのジュリアード音楽院プレ・カレッジ時代のお話。
品行方正なイメージがあったマサルだけど、実はこんなにやんちゃなところがあったとは…!
ナサニエルのスモークサーモンのケイパー嫌いも可愛く、なんだこの2人の可愛さwってなりました。
「鈴蘭と階段」
前作ではサポート役だった奏が運命のヴィオラに出会うエピソードです。
楽器というのはどれも同じ音色なんてことは絶対になく、結局は相性なんだと思います。
音を聴いただけで「あ、あの人の演奏だ」と分かるのは、音楽家として最高の褒め言葉ですよね。
「伝説と予感」
最後を締め括ってくれたのは、伝説のピアニストであるホフマンと塵との初めての出会い。
前作ではすでに他界していたものの、ホフマンのその圧倒的な存在感は隅々まで行き渡っていました。
この2人の出会いが、『蜜蜂と遠雷』に繋がっていると思うと感慨深い気持ちになります。
個人的評価:★★★★★
『太陽の黄金の林檎』レイ・ブラッドベリ

冷えきった地球を救うために太陽から“火”をもち帰ろうとする宇宙船を描いた表題作「太陽の黄金の林檎」。灯台の霧笛の音を仲間の声だと思い、毎年海の底から現われる古代生物の悲哀をつづった「霧笛」。タイム・トラベルがはらむ危険性を鋭く衝いた「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」など、SFの叙情詩人と呼ばれる巨匠の幻想と詩情にあふれる短篇集。ジョゼフ・ムニャーニによる幻想的なイラストも収録。 (「BOOK」データベースより)
久しぶりのブラッドベリは、やはり極上でした。
以前読んだ『10月はたそがれの国』ほどの衝撃はなかったけれど、
1編1編がどれも、その情景が絵画のようにイメージできるほどの圧倒的な筆力!
萩尾望都さんがブラッドベリ作品を漫画化する理由がよく分かるような気がします。
本作には22編の短編が収められているのですが、どれもノスタルジーな気持ちになる作品ばかり。
中には「これどういうオチなの?」というような作品もあるにはあるのですが、
物語の雰囲気や世界観にどっぷりと浸ることもまた、読書の楽しみと言えますね。
個人的に特に印象に残っているのはこちら↓↓
ある寒い夜、暗い海の底からやってくる何者かを描いた「霧笛」。
灯台守の二人が目にしたものとは…。ラヴクラフトを彷彿とさせるような描写が見事です。
これも萩尾望都さんが漫画化されているようですね。読んでみたい!
二つの町が競い合うように城壁の形を変えていく「金の凧、銀の風」。
まるで童話を読んでいるかのようで面白い。結局いつの時代も苦労するのは民衆たちですね。
とんでもない展開になりそうな話ですが、ラストは爽やかな幕引きでホッとしました。
これが最も本作の中でSFっぽいお話なのが「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」。
タイムトラベルによって、狩猟ツアーという名目で本物の恐竜を狩ることができる時代。
でも過去の小さな変化によりタイム・パラドックスが……結末は恐怖…
表題作の「太陽の黄金の林檎」は格別の味わいでした。
冷え切った地球を温めるために、太陽から火を持って帰るなんて発想が素晴らしすぎる!
ブラッドベリの底無しの想像力に脱帽です。
上記以外にも不思議な体験を描いた夫婦の話「発電所」や、
少年の外見のまま年を取らなくなってしまった男の話「歓迎と別離」など、珠玉の短編揃い!
解説が故・中島梓(栗本薫)さんだったのが嬉しい驚きで、ほろりと涙が出ました。
個人的評価:★★★★