FC2ブログ
Welcome to my blog

**第三の扉**(11)

ななこ


ちょっぴり間が空いてしまいましたが、連載11回目です!!

第10回目を書いた直後に悲しい事があったので、しばらくお休みしていました。
だって、あのままだと酷い展開になりそうだったんですもの…balloon_131.gif

予定では、次で最終回になります。
シオン君、ごめんよ……


**第三の扉**(1)
**第三の扉**(2)
**第三の扉**(3)
**第三の扉**(4)
**第三の扉**(5)
**第三の扉**(6)
**第三の扉**(7)
**第三の扉**(8)
**第三の扉**(9)
**第三の扉**(10)


hana15.gif



16歳の誕生日で、父親から次期村長の座を言い渡されてから、7回目の春が来た。
既に初夏の香りを含んだ心地良い風が、草原の海に吹き渡っていく。

銀色に輝く髪が、サラサラと風に揺れ頬をくすぐる。


"今日も、暖かい1日になりそうだな…"


爽やかな風の音、近くを流れる穏やかなせせらぎの音。
アイルは目を閉じ、気持ち良さそうにそれらの音を聞いていたが、突然ハッと目を見開く。



アイル……アイル……!!!!



とても懐かしい、悲痛な叫び声が風に乗って聞こえてきたような気がしたのだ。
あれから一時も忘れた事のない、たった一人の弟の声。


「シオン…?」


だが、ここは死者の国だ。シオンがいるはずもない。
必死に目を凝らし辺りを見渡すが、ただただ遠くまで緑の草原が広がるばかりだ。


弟の事を思い出すたび、胸をナイフで抉られたような痛みが走った。
たまに妙に大人びた事を言うくせに、いつも村人達の目から逃れ自分の後ろに隠れていた弟。
シオンは……今どうしているだろう。


この死者の国でも、やはり<死>というものは存在する。

アイルの母親は、ここでも幼い頃に病気で亡くなっており、
村長である父親も、つい先日狩猟で負った傷が化膿し、あえなく命を落とした。

第三の国で死んだ魂はどこにいくのかと考えたが、明確な答えは得られなかった。


ただ、一つ驚いた事があった。この国では時間の流れ方が普通とは異なるらしい。
歳を取ってはいくのだがその変化はごく緩やかで、アイルの外見もほぼ16歳のままだった。




"シオン…お前も、この国に来れば…"

一瞬そんな考えが頭をよぎったが、すぐに自分の中で打ち消した。
昔、あの地底湖でシオンは言っていたじゃないか。想いの強い魂だけが死者の国に行くと。

シオンは、小さい頃からどこか厭世的な部分があった。

まるで、死そのものに魅了されているような虚ろな目で、あの湖を眺めていたのを思い出す。
シオンには、生に対する執着心がまるでないのだ。自らの命を重く見ていなかった。
だからこそアイルは弟をこの世に繋ぎ止めようと、必死にあの小さな身体を抱きしめたのだ。


"確かに、この手でシオンのぬくもりを、温かさを感じたんだ。
 なのに…俺達、どこで間違っちゃったんだろうな…"


自分は、シオンの事を一生守ると約束したのだ―。
弟はいつも自分を慕ってくれた。それなのに……自分はいつしか彼に背を向けてしまった。
その事が、アイルの心に鉛のように重くのしかかっていたのだった。


アイルは陰鬱な顔をして、草原に無数に生えている黄色の花を一輪摘み取る。
彼の鬱屈した気分を慰めてくれるかのような、太陽のような明るさ。


家で待っているいたずらっぽい妻の顔を思い浮かべ、小さく微笑む。
彼は胸の痛みを無理矢理心の奥底に押し込み、村へ向かってゆっくりと丘を下り始めた。



* * * * * * * * *



既に亡霊達の気配は消え、冴え冴えとした空気に満ちた、玉座の間―。


シオンは冷たい床に横たわったまま、一人静かに死を待っていた。
身体中の血液が沸騰しているかのように全身が熱く、時折耐え切れないほどの激痛が走る。


"小さい頃から、ずっと薬草の勉強をしてきたのに……"


あの花のトゲに猛毒があることを失念していたのだ。
アイルを助けようと焦っていたからだろうか。いや、猛毒の事は分かっていた気がした。
無意識のうちに、自分の命をもって犯した罪を償おうとしていたのかもしれない。

アイルとリルの間を引き裂いてしまった事を。
たった一人の大事な弟に、決して許されない想いを抱いてしまった事を。


だんだん、痛みの間隔が短くなってきているみたいだ。
また霧が出てきたのかと思ったが、自分の目が徐々に霞んできているからだと気付く。


ふと、飛び出してきた村の事を思い出す。
何処からも侵略された事のない平和な村。穏やかで平凡な毎日。
村長であるシオンが突然姿を消し、今頃、村人達はうろたえているだろうか…?

いや、彼らはまた"村長"という地位に誰かを据えるだけだろう。
そもそも心から自分を愛してくれたのは、死んだ母親とアイルだけだったのだ。
今となってはアイルだって僕の事を憎んでいる…そう考えるだけで胸が張り裂けそうだった。



"寒い……。" ケホッと小さく咳き込むと、手のひらに毒花のように真っ赤な血が付いた。



もし…もしも許されるのなら、次生まれ変わった時もアイルのそばにいられたら…。
そしてその時は、歪んだ愛情ではなく心からの温かい愛情を注ぎたい。



"アイル、どこまでも頼りない兄でごめん…。
 結局、本当は僕が兄だってことも伝えることができなかったな…。"



シオンは、生まれて初めて天に向けて祈った。最初で、最後の祈りだった。
つつ…と、夜空のような藍色の瞳から、冷たい涙が零れ落ちる。


どうか、アイルが僕を愛してくれますように―。


その瞬間、天窓から差し込む青白い月の光が、さぁーっと波のように玉座の間を照らした。
シオンの頬に付いた涙の轍も、真っ白な光に溶け込んだ。

もう、痛みはない。ゆっくり目を閉じ、心地よい温かさに身を委ねた。

最期に感じたのは、すぅっと身体が浮き上がるような感覚だった。
シオンは、短くも長い旅路の果てに、この世の一切のしがらみから解き放たれた。


藍色の夜空に、ポワッと一粒の光の球が浮かぶ。
それは、弱々しいエメラルドグリーンの光を放ちながら、ゆっくりと森へ消えていった。



<つづく…>



関連記事
Posted byななこ

Comments 18

There are no comments yet.
picchuko  
Re:**第三の扉**(11)(06/02)

不思議な空間を一人旅している錯覚に陥りました。

この「兄」というところもキーポイントなのでしょうか…。

nanaco☆さんの作品は、情景が目に浮かぶだけでなく、嗅覚もくすぐるんですね〜。

次回が最終回というのは寂しいですけど、、、、

続きを物凄く楽しみにしています。^^

2009/06/02 (Tue) 20:11 | EDIT | REPLY |   
Cedie  
Re:**第三の扉**(11)(06/02)

なんだかかなしくさびしいです(>_<)

扉の向こうって感じは鋼の錬金術師のアニメ(今放送しているのではなく、何年か前にしていたほうです)を思い出しました。



次が最終回ということですが、ハッピーエンドはないのでしょうか・・・



できればみなさん幸せになってほしいです。



2009/06/02 (Tue) 20:44 | EDIT | REPLY |   
浪漫的狼  
雰囲気が

とっても素敵です。悲しい雰囲気が漂いながらも、何だか透明感があって、不思議で。

最後はどうなるのでしょうか。

頑張ってね。

2009/06/02 (Tue) 21:00 | EDIT | REPLY |   
日向 永遠  
Re:**第三の扉**(11)(06/02)

ええっ、最終回が近づいているのですか?



お話をつくるのって大変ですよね。

楽しい反面・・苦労しますね。



情景が美しくていいですね。

死者の国で兄弟は幸せになれるのでしょうか?

もしかして奇跡がおきて・・・なんて・・

2009/06/02 (Tue) 21:39 | EDIT | REPLY |   
nanaco☆  
picchukoさんへ

picchukoさん、今日も読んでいただいてありがとうございます!!

あの出来事から少し時間が空いたのですが、やっぱり悲しい方向へ進んでいっちゃうみたいです…

二人には幸せになってほしいとは思うんですけどねぇ(><)



お互いが自分がお兄さんだと思ったままなんですね。

双子だからそれほど気にしなくても…??と思ったりもするんですが、、、

でも彼らにとっては「兄=弟を守らなくちゃ!!」という図式が出来ているみたいです。笑

ラスト、どういう風に持っていくのかとりあえず考えたので、あとは最後まで突っ走ります!!

2009/06/02 (Tue) 21:52 | EDIT | REPLY |   
nanaco☆  
Cedieさんへ

Cedieさん、こんな拙い文章読んでいただけて感激です!!

「鋼の錬金術師」は漫画もアニメも手をつけたことがないんですが、異世界のお話なんですか??

そういう作品って昔から大好きなので、すっごく気になるわ〜(*^0^*)



なんだか気の滅入る展開になってきちゃって、ゴメンなさいねぇ…苦笑

小説って、書く時の気分に結構左右されちゃうのかもしれないですね^^;

今、とりあえず頭の中にラストは思い描いているのですが、、、

それがハッピーエンドとなるか、否か……。自分でもいまいち断定できません。笑

2009/06/02 (Tue) 21:57 | EDIT | REPLY |   
nanaco☆  
浪漫的狼さんへ

わ〜い♪狼さん、嬉しいお言葉ありがとうございます!!

これ、連載してて今更気付いたんですが、、、

今第1回目とかを読むと、顔から火が出そうなほど恥ずかしいですねぇ……

初々しいというか、文章が硬いというか^^;

まっ、これも良い経験と思って前向きにいきたいと思います。笑



狼さんのキリ番企画も楽しみに待っていますね(^^ゞ

というか、nanacoが踏みたいです!! また「難しいお題」って、嫌がられちゃいそうですねぇ。笑

2009/06/02 (Tue) 22:01 | EDIT | REPLY |   
nanaco☆  
日向 永遠さんへ

日向永遠さん、今日も読んでいただいてすっごく嬉しいです〜♪

ハイ。予定では次の12回目をラストにしようかな、と。

一応、どういうラストにするかは考えているので、あとは文章を組み立てるだけです(^m^ )

お話を作るのって、すごく面白いですよね♪

自分の妄想が、文章になってるんですもの!!笑 よく考えたら恥ずかしいですが…。

言葉の使い方とか、間違っている部分が沢山ありそうでちょっとドキドキしています。



シオン君があまりにも不憫になってきたので、どうにか幸せになって欲しいのですが^^;

果たしてこのラストはハッピーエンドなのだろうか…。

次回も読んでいただけると嬉しいです♪苦情はガッツリ受け付けますので!!笑

2009/06/02 (Tue) 22:08 | EDIT | REPLY |   
☆ちこ  
Re:**第三の扉**(11)(06/02)

面白いですねぇ。

死者の国でも<死>が存在するなんて。そして、そこでも人は生活を営んでいるんですね。

家で待っているアイルの妻が気になります。

そして、次はシオンとアイルはどうなるのかな・・・幸せになれるといいな♪

2009/06/02 (Tue) 23:47 | EDIT | REPLY |   
nanaco☆  
☆ちこさんへ

ちこさん、またまた続きを読んでいただけたようですごく嬉しいです♪

もう既に死者の国というよりパラレルワールドになっちゃってますね…(^^ゞ

死者の国で死んだ人は?? と考えると、また色々とややこしくなっちゃうのでやめときます。笑



一応、次で最終回になります!!

どんなラストにするかは考えているんですが、果たしてこれが受け入れられるかどうか…(* ̄m ̄)

そしてこれが幸せなラストと呼べるのかどうか。笑

近いうちにUPするので、また読んでいただけると嬉しいです♪

2009/06/03 (Wed) 05:46 | EDIT | REPLY |   
茨木 月季  
Re:**第三の扉**(11)(06/02)

こんにちは〜♪

もう最後なんですね。もっと読んでいたかったです。今のところ登場人物の設定は以下の解釈で間違ってないですよね? 続き楽しみにしています。



■リル→はずみでアイルに刺されて死亡

■アイル→シオンを探しに行ったハピネス城でシオンに刺され死にかけ→初めからシオンの存在しない時間の流れの違う世界へ行く、外見16歳 そので村リルと結婚、村長をしている

■シオン→アイルの傷の手当てをするために手にした薬草のトゲの猛毒で死亡 16歳



第3の扉の秘密、湖の光、亡霊たちの行方、気になることが沢山です。まだまだ書いていて欲しいです!!!

2009/06/03 (Wed) 10:23 | EDIT | REPLY |   
まる811  
Re:**第三の扉**(11)(06/02)

やーーだーーー!次で最終回なんてやだよー!うぅっ…くすん…シオン…。

きっとnanacoちゃんのことだから番外編も書いてくださることでしょう。それを期待します…

シオンの最後の祈りは届くんでしょうか。シオンは幸せだったんでしょうか。

「一切のしがらみから解き放たれた」のを喜ぶべきなんでしょうか。

扉の向こうのアイルも心配だし…。

最終回(…くすん)を楽しみにしてます。

2009/06/03 (Wed) 12:03 | EDIT | REPLY |   
エンブレムT  
Re:**第三の扉**(11)(06/02)

プチおひさです!



え!?次がラストですか!!

なんか寂しいわ。。。

シオンとアイルを少しでも幸せにしてあげてねw

(リルはこの際置いといて良いです・・・笑)

2009/06/03 (Wed) 18:07 | EDIT | REPLY |   
miwa125  
Re:**第三の扉**(11)(06/02)

こんばんは〜♪



第10回を、うっかりして読み損ねてたので、

続けて楽しませてもらいました〜(*^^)

哀しいけど、すごく美しいお話ですねぇ(><)

死者の国に死があるなんて、

すごく面白いかも〜!!

ということは、第四の国とかがあるのかしらん???

次が最終回なんですね〜(T_T)

寂しいけど、早く結末が知りたいような。。。

ちょっと複雑な気分です〜^^;

完結しても、番外編とかを是非書いてくださいね〜♪

2009/06/03 (Wed) 18:09 | EDIT | REPLY |   
nanaco☆  
茨木 月季さんへ

月季さん、今日も読んでいただいてとっても嬉しいです♪

若干自分の心情が表れた展開になっちゃったかもしれませんねぇ…^^;



おぉ!! 感激です!!

まさに月季さんが書かれている事で間違いないです。

こうやって箇条書きにすると、食い違いとか出てきそうでなんだか怖いですねぇ…笑

とりあえず今のところは大丈夫でしょうか。

亡霊達の事についてはもっと広げて書きたかったんですよね、ハピネス城で起こった惨劇とか…。

でも今回は、とりあえずこの辺で終わらせておきま〜す(^^ゞ



月季さんに毎回とても丁寧に読んでいただいて、本当に嬉しいです!!

ラストはハッピーエンドかどうか微妙なラインですが…汗 読んでいただけると嬉しいです♪

2009/06/03 (Wed) 19:28 | EDIT | REPLY |   
nanaco☆  
まる811さんへ

シオン君、ごめんよぅと謝りながら書きました(><)

どうしても今のnanacoにはこれしか書けませんでした…汗

アイルもシオンも、お互いハッピーな結末になれたら良いんですけどねぇ。

また元通りの仲に戻るには、シオンはあまりにも鬱屈した感情を抱えている気がして〜^^;

というか、若干おさまりがつかなくなってきたのも事実です。笑



どんなラストにしようかは、一応頭の中にあるので、あとは頑張って書きます!!

こんなショボイ小説でもラストを書くの大変なのに、

もし「グイン・サーガ」を終わらせるとしたら、恐ろしい労力を使いそうですよね(><)

あぁ……気が付くと想いはグインへいってしまう……。

2009/06/03 (Wed) 19:35 | EDIT | REPLY |   
nanaco☆  
エンブレムTさんへ

おぉっ!! エンブレムTさん、プチおひさです〜♪

あれ以来ですよね……nanacoは今の所、無理矢理頭から締め出していますが、

ちょっとした拍子にすぐ思いがグインの所にいってしまいます。泣



何気に自分で書いていて、アイルよりもシオンに感情移入しちゃっていたので、

なんとか幸せにしてあげたいとは思うんですけどねぇ…(ρ_−)

リルの幸せは最初っから頭にないみたいです!!笑

2009/06/03 (Wed) 19:38 | EDIT | REPLY |   
nanaco☆  
miwa125さんへ

miwaさん、第10回も続けて読んでいただけたんですね♪ありがとうございま〜す(*^0^*)

そういえば、あの日は栗本さんの訃報を聞いて、二回更新したんでした……泣

微妙に鬱々した気持ちで物語の続きを書いたので、ちょっと暗い展開になってごめんなさい!!



お!! 第四の世界があるって面白いかも(^m^ )

miwaさんのアイデアをもらって、番外編書こうかしら…笑

で、第四の世界でも死があったら、さらに第五の世界があったりして。一生終わりません!!爆

ラストの展開は、ある程度考えてはいるのですが、果たしてこれはハッピーエンド??

miwaさんに気に入っていただけると良いのですが、相当自信ないです〜^^;

2009/06/03 (Wed) 19:44 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply