「夢の上 サウガ城の六騎将」多崎礼
夢の上 サウガ城の六騎将
著者:多崎礼
評価:
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
サマーアにアライスという「光」が現れ、人々は希望を取り戻す。だが、「光」を未だ目にすることのなかった時代、「光」が己の輝きの萌芽に気づく前、その姿はどう映っていたのだろう。混沌とする「未来」を決して諦めなかった者たちがいた。彼ら六人は時にアライスを支え見守り、救国軍の礎となる。そのケナファ騎士団の六士隊長の軌跡を追った連作短編集。
【目次】(「BOOK」データベースより)
世界で一番速い馬/天下無敵の大盗賊/汝、異端を恐るることなかれ/あの日溜まりの中にいる/約束/手紙
なんとっ…!「夢の上」の外伝が出ちゃいました。
個人的にはあの3冊が最高の作品だったので、まさかまた彼らのお話が読めるなんて!と喜ぶ反面、
あの悲しくも美しい余韻を崩さないで欲しい、、、という気持ちもほんの少しあったんです。
でも、そんな事は杞憂だったようですね
本編では詳しく語られる事のなかったケナファ騎士団の、過去や未来をちょっぴり覗いた感じ。
六士隊長の一人一人にスポットを当て、「夢の上」の世界をさらに奥深いものにしてくれました。
この作品には6つの短編が収められていますが、
それぞれの話の聞き役が次の話の話し役になるという、リレー形式の連作短編集です
特に好きだったのは「汝、異端を恐るることなかれ」「あの日溜まりの中にいる」「手紙」。
「汝、異端を恐るることなかれ」
本編でも登場した(変態)医師トバイットの物語。
飄々として見える彼にも凄まじい過去があったのね。当時異端とされていた蘇生術、人体解剖。
でも邪教と罵られる事を恐れていては、人々を救う事はできない。前に進む事はできない。
困難を乗り越えてきたからこそ、今のトバイットがいるんですね。
昔は彼も「普通」だったのねと、過去のエピソードを読んでいてちょっと笑えました。
「あの日溜まりの中にいる」
無口な第三士隊長イヴェトの物語。
父親に捨てられた少年は、祖父と姉代わりの大山猫と共に山の中で暮らす事になった。
大山猫の事を「姉ちゃん」と呼んで、一緒に眠り、一緒に狩りをするイヴェトが微笑ましかったです。
多崎さんの猫好きがひしひしと伝わってくるような、大山猫の仕草もいちいち可愛くて!
悲しいけれど、ふわっと日溜まりの暖かさに包まれるような心地良いお話でした。
「手紙」
本編でも大好きだった第一士隊長アーディンの物語。
この本の中で唯一本編より後の世界が描かれています。あぁ、相変わらず素敵なアーディン!
でも、正直複雑な気持ちもあって…。語りたいのでネタバレ部分反転しておきますね。
↓↓ココカラ
まさか50歳になったアーディンが出てくるとは!しかも未だに独身とはな!(笑)
分かりますよ、彼が惚れているのはイズガータだけだもの。もう悲しくなるくらい一途なのね。
本編で、イズガータと結ばれる事はないと分かった時にアーディンがアライスに言った言葉。
奴隷も貴族も関係なく、自由に伴侶を選べる国を作ってくれますか?と。
アーディンの悲願が叶ったのは嬉しい。とても嬉しいのだけれど。
イズガータの娘アルアーラに惚れられているのは、何だかなぁ…と思うのです(笑)
イズガータとアーディンの切なくほろ苦い思い出は、そっとしておいて欲しかった気がします。
↑↑ココマデ
…と、まぁ色々思う所もあるのだけれど、「夢の上」ファンにはたまらない外伝ですね~
ホッと心温まるお話、切なさや痛みを感じるお話、涙腺を刺激するお話、
色々なタイプの作品が揃っていますが、どれもふんわりとオブラートに包まれているかのよう。
壮絶な過去が未来へと繋がり、さらに希望の光が見えるラストに心が温かくなりました
≪検索用INDEX≫ (クリックすると別ウィンドウで開きます♪)
作家名から調べたい時は… ◆ 作家別 INDEX ◆
作品名から調べたい時は… ◆ 作品別 INDEX ◆
にほんブログ村
- 関連記事
-
- 「天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語」中村弦
- 「夢の上 サウガ城の六騎将」多崎礼
- 「折れた竜骨」米澤穂信