「倒立する塔の殺人」皆川博子
倒立する塔の殺人
著者:皆川博子
評価:
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
戦時中のミッションスクールでは、少女たちの間で小説の回し書きが流行していた。蔓薔薇模様の囲みの中に『倒立する塔の殺人』とタイトルだけ記されたその美しいノートは、図書館の書架に本に紛れてひっそり置かれていた。ノートを手にした者は続きを書き継ぐ。しかし、一人の少女の死をきっかけに、物語に秘められた恐ろしい企みが明らかになり…物語と現実が絡み合う、万華鏡のように美しいミステリー。
皆川作品は「聖餐城」、「開かせていただき光栄です」に続き3冊目になります。
神聖ローマ帝国、18世紀ロンドンの次は戦時中の日本ですか(笑)
皆川さん、どんだけ守備範囲広いんだろう。。。毎回感心しちゃいますよ~

毒のある美しさ。
この本を一言で言い表すなら、迷わず「毒」という言葉を使います。ただ美しいだけじゃないの。
少女達の残酷さ、女学校ならではの閉塞感。万人受けはしませんが、好きな人は好きだろうなぁ。
この作品を読みながら、恩田陸さんの「蛇行する川のほとり」を思い出しました

姉妹のように仲が良い二人の美少女だとか、ふとした時にほんのり悪意が顔を覗かせる瞬間だとか。
読み進めるうちに、決して見た目通りではない世界が広がっていて、ドキリとしてしまいます。

「倒立する塔の殺人」と名づけられた一冊のノートを中心に、
ある一人の少女の死、そして隠された過去の出来事がじわじわと明らかになります。
ノートに書きこまれた小説と、現実世界での出来事が交互に綴られていくのですが、
ともすれば小説と現実がごっちゃになってしまい(笑)何度も頭の中を整理しながら読み進めました。
太平洋戦争末期の女学校という、ちょっと特殊な設定なのですが。
違和感なくスッと物語に入り込んでいける、皆川さんの圧倒的な筆力には脱帽しますし、
それ以上にこの時代を背景に、あくまでも「ミステリ」として成り立っているのが素晴らしいです~

一種独特な雰囲気だけに読む人を選ぶとは思いますが、これは一読の価値アリです!!
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